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「そのひとりのキャリアストーリー vol 10」 ソフトウェアエンジニア 髙谷 遼さん

バレエを通した「そのひとりのキャリアのストーリー」をご紹介するシリーズ。

記念すべき第10回。今回は、初の男性ダンサーにインタビューさせていただきました!

元バレエダンサー、現システムエンジニアの髙谷 遼さん(以下、髙谷さん)

にお話を伺います。

元バレエダンサー/現システムエンジニア 髙谷 遼さん

髙谷さんは、ご実家がバレエスタジオでバレエダンサーの父のもとに生まれ、幼少期からバレエダンサーを目指し、海外留学からプロダンサーとして東欧バレエ団、日本のバレエ団で主役もつとめる経験を経てキャリアチェンジ。

現在はアプリ開発の会社でシステムエンジニアとして活躍されています。


【髙谷 遼さん プロフィール】

8歳から神奈川でバレエを始める。

2006年 AMステューデンツに入所

2008年 スターダンサーズ・バレエスクールに入学

2012年 ワガノワバレエアカデミーに留学

2013年 Grand theater lodz に入団

2016年 Opera national bucharest にソリストとして入団。

2017年 スターダンサーズ・バレエ団に入団。

2020年 同団を退団

2020年11月よりソフトウェアエンジニアとして従事する

現在28歳。(2022年10月現在)


【幼少期からバレエダンサーを目指し、留学を視野に入れて練習に励んだ日々】

添田「髙谷さんは、何歳の時にバレエを始めて、どのような経緯で海外のバレエ団へ行かれたのか、
詳しくお聞かせいただけますでしょうか。」

髙谷さん「8歳の時にバレエを始めて、10歳頃、小学生の時にはもうバレエダンサーになりたいと思っていたので、自然とコンクールに出場するようになりましたね。
そのうち周りの仲間も留学をしていったので、中学生ぐらいには留学を目指していました。」

添田「髙谷さんのご出身は、関東ですか」

髙谷さん「そうですね。神奈川県横浜市ですね。」

添田「横浜ご出身なのですね。一般的にお教室には男性の割合が少ないと思いますが、
入られたお教室には、男性も結構いたのでしょうか。」

髙谷さん「僕の場合は、当時通っていたお教室にボーイズクラスが特別にあって、そこにすごく男子が集まってきていました。
当時から複数のバレエ団に子役として出演していたので、その時に同世代の男の子たちがいましたね。」

添田「なるほど、そうなんですね。レッスン自体は週にどれくらいしていたのですか。」

髙谷さん「小学生の時にはすごく多いという感じではなかったですね。週3〜4回位でした。」

幼少期の様子

添田「習い事としては、小学生の男の子では結構回数が多い方ですよね。」

髙谷さん「そうですね。高校生の時には途中で学校を通信制に切り替えたので、
その時には週に12回ぐらいレッスンしていました。」

添田「えっ、どういうことですか?週は7日ですよね。12回とは……。」

髙谷さん「平日は1日2回、土日に1回レッスンするみたいな感じのことを高校生の時にやっていました。」

添田「すごく練習されていたのですね! 
高校は通信で卒業資格を取られたような感じでしょうか。

それから、留学するきっかけや年齢を教えていただけますか。」

髙谷さん「留学するきっかけは、ワガノワバレエアカデミー←(リンク添付)の入学オーディションを受験したことです。年齢的には、18歳から留学しましたね。」 

添田「ワガノワでは、何年生に編入したのでしょうか。」

髙谷さん「18歳からなので、最終学年でした。」

留学時代

添田「そうでしたか。最終学年ですと、8年生ですか?
では、その後卒業されて、すぐ就活することになったんでしょうか。」

髙谷さん「今は8年生ですが、当時は9年生が最終学年でしたね。
留学してあっという間に就活みたいな感じだったんですよ。

あまりロシアのバレエ団に入ろうとは思っていなかったので、ヨーロッパに行こうと思っていたんです。2〜3社ほど受けて、ポーランドのバレエ団に決まりました。」


【幼いころから憧れていた念願の海外のバレエ団入団を叶えた】

添田「2、3社で!早いですね!ポーランドのカンパニーに入って、どれくらいの期間いらっしゃったのですか。」

髙谷さん「ポーランドのカンパニーでは3年働きました。
純粋にすごく楽しかった思い出があります。

その後、ルーマニアのブカレストで1年間働いて、日本に帰ってきました。」

ルーマニア国立バレエ団時代

添田「そうでしたか。ヨーロッパでは通算で4年間働かれたのですね。日本に帰ろうと思ったきっかけは何かありますか?」

髙谷さん「そうですね。早いうちに漠然と日本に帰りたいという気持ちがあって。」

添田「日本に帰りたいと思ったのはいくつぐらいの時でしたか。」

髙谷さん「日本に帰ろうと考え出したのは、ロシアに留学してからすぐですね。
そんなに長く海外にいることはないだろうと思っていました。

結構、自分は石橋を叩いて渡るような慎重な性格なんですよ。早めに日本に帰って将来の基盤を築きたいなと思っていました。」

添田「帰国を考え出すには早いですね。
日本に帰ったら何をしようか。とは考えずに、一旦は帰ってから考えようという感じですか。」

髙谷さん「そうですね。何とか日本でもバレエ団に入ってバレエを続けていこうとは思っていました。
日本では、男性バレエダンサーは『発表会を踊って生活の基盤を立てる』という考えが多いので、
自分もそういう風に生活しようかなと思っていたという感じですね。」


【ロシア留学とヨーロッパ2か国でのバレエ団入団経験を経て帰国】

添田「その後、実際に日本に帰ってきてどうでしたか。」

髙谷さん「帰国後は、日本のバレエ団に入って、発表会等の仕事を受けていました。
けっこうそれが大変でした。

スケジュールがすごく厳しくて、平日はバレエ団、バレエ団が終わった後に発表会があって、
土日もリハか本番があるといった生活です。

収入については、発表会からの収入の割合がかなり多い分、いただいたお仕事をほぼ受けていました。」

添田「そうだったんですね。確かにそのスケジュールは大変ですね。
体力的にもきついかもしれません。

その生活サイクルでは続けられないかもしれないと感じることはありましたか。」

髙谷さん「そうですね。自分としてはあまり長くは続けられないと感じていました。」


【将来を見据えて異業種へ転職する決断】

添田「髙谷さんはバレエダンサーからお仕事を転向されたと思いますが、今現在のお仕事について聞かせてください。」

髙谷さん「今はソフトウェアエンジニアをしています。」

添田「バレエダンサーとは全く別物のお仕事ですよね。
以前このインタビューシリーズでお話を伺った元バレエダンサーの方で、ご両親の影響からか幼少期からデザインに遊びながら触れて、スキルをつけてウェブデザイナーのお仕事で起業された方がいました。


お仕事の転向は、そもそもやったことのある仕事内容なのか、それとも全く違うのかによって状況が変わるかと思います。
髙谷さんは、ソフトウェアエンジニアのお仕事をされるにあたり、どちらのタイプでしたか?」

髙谷さん「実は、僕は趣味でプログラムを書いていたんですよ。」

添田「やはり!そうでしたか!」

髙谷さん「そうなんですよね。たまにプログラムを書いていて、だんだんやっていくとできることが増えてくる。そうすると楽しくなるという感じで、それを仕事にしてみようかと思いました。」

添田「そうなのですね。就職のために一から勉強するというのではなく、
元々先を考えて、現役バレエダンサーをやりながら趣味でやっておいたことが活きたんですね。」

髙谷さん「現役バレエダンサーのうちから何か並行して興味のあるものを学んでみることは良いことだと思います。」

添田「確かに。並行して学ぶ事は良い事ですね。
髙谷さんの周りには、海外へ行かれたばかりではなく、日本にずっといる方も含めて男性のバレエ経験者が多くいらっしゃると思います。

その中で髙谷さんと同じように、バレエではなく違う職業をされている方はいらっしゃいますか。」

髙谷さん「たまに見ますね。それこそデザインの仕事をしていたり、会社を立ち上げている人もいます。

でも、そんなに大勢思いつかなくて、ごく少数ですが。

バレエと親和性が高いヨガやピラティスの勉強をする人はとても多くいますね。」

添田「スポーツの世界でも、柔道や合気道をされていた方が整体を勉強して開業するという方が多いと聞きますので、状況は似通っていますね。
ただそれはそれで数が多いので、競合他社が山のようにいるかもしれませんね。」

髙谷さん「確かにそうですね。」

添田「全く違う職種に転職をすることについて、親御さんは何かおっしゃっていましたか。」

髙谷さん「実は父がバレエダンサーで、家がバレエスタジオだったんです。

基本的にうちは両親とも放任なので確かに転職について伝えたときは多少びっくりしていましたけど、
そうなんだ、っていう感じでしたね。」

添田「髙谷さんのように留学やキャリアチェンジをうまくされている方のお話をお伺いすると、結構親御さんはあまり多くを口出しせずに、暖かく見守ってくださる方が多いのかなと思います。

突き放しているわけではなく、見守っていくという感じです。

この先、今の仕事を続けつつどうなっていくかはまだわからないですよね。」

髙谷さん「そうですね。様々な選択肢があると思います。
僕自身はバレエダンサーからガラッとキャリアチェンジをしたので、これから先ももしかしたらいろんな変化があるかもしれません。」


【就職活動について】

添田「今のお仕事についてもう少しお伺いしますが、会社にお勤めされているのですか。」

髙谷さん「そうですね。」

添田「入社面接はどうでしたか。」

髙谷さん「普通に面接を受けました。」

添田「履歴書に、前職バレエダンサーと書いてあれば、面接でその話は出ませんでしたか。」

髙谷さん「出ましたね。バレエダンサーという職歴はとても珍しいと思うので、話を突っ込まれることはありますが、それで不利になるようなことは特にないですね。」

添田「面接のときにはどのような質問をされましたか?」

髙谷さん「エンジニアとしての面接を受けていますので、もちろんエンジニアとして固有の話が多かったのですが、
それだけではなく、自分の強みや弱み、今までの経験についてはどこの面接でも必ず話すことでした。

前職がバレエダンサーであるということは、好評でしたね。
ほかの人とは違う過酷な人生経験だと思うので。」

添田「海外で就職して転職も経験されていますからね。」

髙谷さん「そういう話をすると、しっかりしているんだ、と思っていただけるし、それはそれで良い強みです。」

添田「確かに、それはかなりインパクトありますよね。今の業務内容はプログラムを組むことでしょうか。」

髙谷さん「そうです。プログラムを書きまくっています。」

添田「会社に通勤していますか?」

髙谷さん「今は、在宅ですね。」

添田「そうでしたか。今の生活は充実していますか?」

髙谷さん「はい、めちゃくちゃ充実していますね。
バレエとエンジニアの仕事って全然違うようですごい結構似ているんです。」

添田「素晴らしい。どんなところが似ているんですか。」

髙谷さん「二つとも、ある意味、技術職です。
実力があればあるほど優遇してもらえるし、本質的にはとてもよく似ていますね。
やっていることが違うだけなんです。
結局技術が大事みたいなところが特に似ています。バレエ経験を活かせる部分がすごくありました。」


【異業種への転職が周りのバレエ仲間にもたらす影響とは】

添田「周りに髙谷さんの経験を聞いて、男性バレエダンサーの方で触発されたような方はいませんか。」

髙谷さん「今、コロナ禍になって、この先どうしようかと考える男性バレエダンサーが多くなっているようです。
そういう人たちから質問を受けることがありますね。」

添田「そうなんですね。どんな質問がありますか?」

髙谷さん「結構いろいろありますが、どうやってエンジニアになったのか。
転職活動はしたのか。
面接するときにはどういうことを覚えて臨んだんですか、といった内容を聞かれました。」

添田「そうですか。かなり具体的な質問をされていますね。
私自身もコーチの資格以外に、キャリアカウンセリングの勉強をして、
キャリア形成も含めたメンタルコーチングとして様々なパターンの質問や相談を受ける仕事をしています。
どういう風に就職するのか、早い段階からキャリア教育を、といった内容を親御さんやご本人にすることがあります。

髙谷さんは『この先どうしたら良いんだろう』と自分で考えられたんですよね。
早い段階で転職を考えたことが素晴らしいですね。」

髙谷さん「全然ですよ。好きに生きてきただけで。
これから先を考えたらまだどうなるかわからないですね。」

添田「活き活きしていますね!今はエンジニアになって何年ですか。」

髙谷さん「もうすぐ2年ですね。」

添田「2年ですか。仕事が楽しい時でしょうか。」

髙谷さん「まだまだ続けようかなっていう感じですね。」

添田「家がバレエスタジオというお話でしたが、親御さんの手伝いをするというお気持ちはありますか。」

髙谷さん「そうですね。その可能性もあると思います。」

添田「もしバレエスタジオで教えることになったら、そういう人生経験をしていることは、通っている生徒さんにとって良いお手本になるかもしれませんよね。」

髙谷さん「バレエダンサーとしても、エンジニアになっても様々なことを勉強しているので、
それが将来実家のバレエスタジオにも還元できる可能性もきっといっぱいあるんだろうな、と思っています」

添田「素晴らしい!そのあたり、海外でも日本でも社会に出た経験があるから強いですね。
更に会社勤めの経験があると、ビジネスマナーや一般常識が自然に身に付きますし、いろんな方とつながりを持つことで、人としての幅が広がると思います。

これからが楽しみですね。」

髙谷さん「そうですね、いろいろと夢が広がりますね。」


【先輩より男性バレエダンサーへひとこと】

添田「今、“バレエ男子”がちょっとしたブームといいますか、以前よりも目立つようになりましたよね。

これから海外留学やプロを目指す男性のバレエダンサーに、先輩から何か一言、お願いします。」

髙谷さん「バレエダンサーだった時期があったからこそ、嬉しいことや辛いことの経験が、今の仕事につながってエンジニアとして働けているとすごく思っています。

まずはバレエに死ぬ気で取り組むことでいろいろな道につながるし、それが一番かなと思います。」

添田「目の前のことに全力で取り組むからこそ、次の道も、自分の強みも見えてくる。
大切なポイントですね!

髙谷さん、お話を聞かせていただきありがとうございました。」


【編集後記】

業界の中でも、男性バレエダンサーは全体でも女性に比べて人数が限られています。

髙谷さんのように実力のある方は国内外のバレエ団でプロダンサーとして踊りを仕事にできますし、発表会の仕事も多く需要があるようです。

しかし、それはほぼ休みなしで身体を酷使しつづけることを意味します。

バレエダンサーは身体あっての仕事。
スケジュール管理も難しくなり、「いつまで続けよう」と悩むこともあるかもしれません。

幼い頃からの憧れと努力の甲斐があって、念願の留学を果たし、ヨーロッパでのプロダンサーデビューの夢を叶えた髙谷さん。

やがて職業転向された髙谷さんが選んだ仕事は、趣味の延長で興味をもっていたシステムエンジニアでした。

新たな道でやりがいと面白さと向き合い、これから先の夢についても生き生きとお話しされる姿が印象的でした。

このお話を受けて、親子のメンタルコーチⓇとして皆さんへお伝えしたいのは、
早い段階でキャリアの選択肢をもつことの大切さです。

バレエダンサーとして舞台で仕事ができる期間は、一般企業の仕事よりはどうしても短くなります。

ただし、ダンサーという稀有なキャリアは必ずその先に活きるはずです。

バレエに真剣に打ち込むことは立派なことですが、近視眼的にならずに、将来を見据えて準備を始めておけば困りごとを減らせるかも知れません。

髙谷さんのお話からは、親御さんの姿勢についてもヒントがありました。

「放任」という言葉が出るほど、ご本人の意思を尊重して髙谷さんを見守ってこられたようです。

髙谷さんは自らの考えのもと自主的に努力し、目標を実現させたからこそ今があるのでしょう。

誰にとっても、バレエに真剣に取り組んだ経験は、今後どのような道に進んでも糧になるのではないでしょうか。

バレエでの経験を基盤に、あらゆる職業に粘り強くプロ意識を持っていけるはずです。

支える親御さんも、ぜひお子さんの可能性を信じて見守って、
必要な時にはいつでもサポートができるように心構えをもっていただければなによりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回のインタビュー【そのひとりのキャリアストーリー】も、お楽しみに!

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